頭部MRIのT1画像で歯状核に高信号がみられるとき

 MRIの検査をおこなっていると極稀に小脳の歯状核部分がT1で高信号にでる患者様がいます。始めて見たときに「なんだコレ!?」と、様々な書籍をひっくり返して調べた覚えがあります。MRIに携わっている皆様は見たことがあるでしょうか?また、原因を知っているでしょうか?今回はその原因についてのお話です。

原因はMRI造影剤!

 結論を言うと何らかの病変ではなく、過去に使用されたMRI造影剤が沈着している可能性が高いです。「造影剤が沈着って大丈夫なの?」と思われるかもしれませんので、詳しく解説していきます。

 事の発端は、2013年の論文でガドリニウム造影剤を用いた造影MRIを複数回おこなった患者に歯状核・淡蒼球・視床枕の3箇所でガドリニウムの脳内沈着が確認されました。ガドリニウムは毒性であり、キレートをつけることで腎臓から体外への排出を促しているのですが、論文により脳内沈着が起こりうることが明らかとなり、以降様々な追試がおこなわれてきました。

  • 線状型ガドリニウム造影剤(マグネビスト・オムニスキャン)は白く描出されるが、環状型ガドリニウム造影剤(プロハンス・マグネスコープ・ガドビスト)は描出されない
  • 脳組織の科学分析をおこなうと、脳のどこからでも検出された
  • 環状型ガドリニウム造影剤を使用した場合でも、少量ではあるがガドリニウム造影剤が検出された

 これらの結果を受けて厚生労働省は2017年11月にガドリニウム造影剤が人体に有害である証左はないものの、潜在的なリスクとなる可能性が否定できないとしてMRI造影剤の必要性を慎重に判断するMRI造影剤には環状型ガドリニウム造影剤を第一選択とするように添付文書の改訂による注意を呼び掛けています。

 現在では多くの医薬品会社が線状型ガドリニウム造影剤を生産中止にしています。

 また、アメリカでも17年12月にガドリニウム造影剤に対する警告クラスが修正され、欧州では全ての線状型ガドリニウム造影剤に関する市場認可が変更されました。

 今のところガドリニウム造影剤の沈着による障害は報告されていませんが、今回の記事について記憶に留めておいて欲しいです。

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