造影剤の新常識!造影剤使用直後の母乳や子供への影響はなし!?

 日本で使用が認められているヨード造影剤およびガドリニウム造影剤の添付文書を見ると『授乳中の女性への造影剤投与後24時間または48時間は授乳をさけること』とされています。EOB・プリモビスト注シリンジでも『本剤投与後24時間は授乳を避けさせること』とあります。もちろん、乳児に母乳を介して造影剤を摂取させないためなのですが、近年では母親が造影剤を使用しても授乳による乳児への影響は殆ど無いと考えられています。

 そもそも、この制限は動物実験において造影剤が乳汁中に移行するというデータをもとに設定されたものです。しかし、米国やヨーロッパではこのような造影剤投与後の授乳に関する強い制限はなされていません(米国放射線学会(ACR)や欧州泌尿器生殖器放射線学会(ESUR)のガイドラインから)。それどころか、以下のような研究結果から造影剤投与から24時間以内に授乳をおこなったとしても乳児が吸収する造影剤は極めて微量であるとの見解です。

  • ヨード造影剤の投与後24時間以内の母乳への移行は投与量の1%未満、乳児における消化管からの吸収は母乳中の造影剤の1%未満 → つまり0.01%未満
  • ガドリニウム造影剤の投与後24時間以内の母乳への移行は投与量の0.04%未満、乳児における消化管からの吸収は母乳中の造影剤の1%未満 → つまり0.0004%未満

 このような点をふまえ日本放射線学会は造影剤使用後の授乳における乳児への影響は非常に小さい。特段の理由のない限り造影剤使用後の授乳制限は必要ないと判断しています。ただし、母親が造影剤による乳児への影響を懸念する場合があると思われるので、よく相談した上で決定することが望ましいです。

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